コラム2026/08/05
【コラム】「後で伝えよう」が、育成を止めてしまう フィードバックは「その場」が理想。でも、忙しい現場だからこそ続けられる工夫がある
若手社員と指導者、それぞれの言い分
若手社員向けのフォローアップ研修やOJT担当者研修では、フィードバックに関して次のような声を耳にすることがあります。
若手社員からは、
「もっと早く教えてほしかったです」
「数日後に言われても、何のことだったか思い出せませんでした」
一方で、管理職や先輩社員からは、
「その場で伝えたかったけれど、お客様対応中だった」
「シフトが合わず、話すタイミングがなかった」
「忙しくて、気づけば一日が終わってしまった」
という声が聞かれます。
若手社員は、できるだけ早くフィードバックを受けたい。
管理職や先輩社員も、その場で伝えた方がよいことは分かっている。
しかし、現場では毎回それを実現できるとは限りません。
だからこそ私たちは、「フィードバックはその場で行うべき」という原則だけではなく、忙しい現場でも継続できる仕組みづくりが重要だと考えています。
フィードバックは、行動に近いタイミングで伝える
フィードバックは、できるだけ行動に近いタイミングで行うことが望ましいと考えられます。
行動から時間が空いてしまうと、
・本人が当時の状況を思い出しにくい
・指摘の背景や意図が伝わりにくい
・具体的な改善行動につながりにくい
といったことが起こりやすくなります。
改善点だけではありません。
良い行動も早めに伝えることで、本人は、
「この行動でよかったのだ」
「次も続けてみよう」
と、自分の行動を振り返りやすくなります。
そのため、「できるだけ早く伝える」という原則は、人材育成において大切にしたいものです。
ただし、早ければ早いほどよいとは限りません。
周囲に人がいる場面や、本人が感情的になっている状態では、その場で伝えることが適切でない場合もあります。
相手が落ち着いて話を聞けるか。
人前で伝えても問題のない内容か。
対話に必要な時間を確保できるか。
こうした点にも配慮しながら、できるだけ早く、相手が受け止められるタイミングを選ぶことが重要です。
現場では、理想どおりにいかないこともある
実際の職場では、毎回、理想的なタイミングでフィードバックできるとは限りません。
サービス業では、お客様対応を優先しなければならないことがあります。
製造現場では、作業を途中で止められないこともあるでしょう。
シフト勤務では、そもそも指導者と若手社員が顔を合わせる時間が限られている場合もあります。
さらに、
「後で伝えよう」
と思っているうちに別の仕事が入り、気づけば退勤時間になる。
「明日でいいか」
と思った頃には、
「今さら言うのもな……」
という気持ちが生まれ、結局伝えられない。
こうしたことも起こります。
これは、管理職や先輩社員の育成意識が低いからとは限りません。
忙しい現場で多くの業務を抱え、日々さまざまな判断をしている方であれば、誰にでも起こり得ることです。
問題は、その場で伝えられなかったこと自体ではありません。
その後、伝える機会がつくられないまま、フィードバックが消えてしまうことです。
大切なのは「伝えられなかったとき」の仕組み
だからこそ重要なのは、
「その場で伝えられなかったら、どうするか」
まで決めておくことです。
例えば、
・その日の終礼で5分だけ振り返る
・次に勤務が重なったとき、最初に声を掛ける
・「後で少し話そう」と先に約束だけしておく
・気づいたことを簡単にメモし、後で確認する
・定期的な面談や1on1で扱う内容として残しておく
こうした小さなルールがあるだけでも、伝え忘れや先送りを防ぎやすくなります。
ただし、メモを残すこと自体が目的ではありません。
「後で伝えるための記録」として活用し、実際の対話につなげることが大切です。
「その場で伝える」という理想を掲げるだけでは、忙しい現場は変わりません。
理想どおりにできなかったときでも育成を止めない仕組みを考えることが、継続的な人材育成には欠かせないのです。
フィードバックは、タイミングだけでは決まらない
若手社員にフィードバックを伝える際には、タイミングだけでなく、内容や伝え方も重要です。
例えば、改善点を伝える場合でも、
・どの行動について話しているのか
・なぜ改善する必要があるのか
・どのような状態を期待しているのか
・次に何を意識してほしいのか
を具体的に伝えることで、本人は内容を受け止めやすくなります。
単に、
「もっと早く動いてほしい」
と伝えるのではなく、
「昨日の対応では、相談のタイミングが締切直前になっていました。次回は、方向性に迷った段階で一度声を掛けてください」
と、事実と期待する行動を分けて伝える。
良い行動についても、
「よく頑張ったね」
だけではなく、
「お客様の状況を先に確認してから説明していた点がよかったです」
と具体的に伝える。
このようなフィードバックであれば、本人も何を続け、何を変えればよいのかを理解しやすくなります。
研修では「現場で続けられる工夫」を考える
日本ODコンサルタンツでは、OJT担当者研修や若手社員フォローアップ研修の中で、
「リアルタイムでフィードバックできない場面」
を参加者同士で出し合うことがあります。
すると、
・終礼の5分を活用する
・翌朝、必ず最初に声を掛ける
・まず「後で話そう」と約束する
・気づいたときに短いメモを残す
など、それぞれの職場に合った工夫が共有されます。
研修で一般的な原則を学ぶことは重要です。
しかし、それだけでは実際の行動につながらない場合があります。
職種や勤務形態、業務の進め方によって、実践しやすい方法は異なるからです。
だからこそ私たちは、知識を学ぶだけではなく、
「自分たちの職場で無理なく続けられる方法を考えること」
を大切にしています。
おわりに
フィードバックは、できるだけ行動に近いタイミングで伝えることが理想です。
しかし、忙しい現場では、毎回その理想どおりに進められるわけではありません。
大切なのは、
「その場で伝えられなかったから終わり」
ではなく、
「どうすれば次の機会につなげられるか」
という視点です。
人材育成は、一度の声掛けで完結するものではありません。
日々の小さなフィードバックの積み重ねが、若手社員の成長を支え、やがて職場全体の育成文化をつくっていきます。
「OJT担当者によって、指導の頻度や方法に差がある」
「忙しい現場では、育成やフィードバックが後回しになっている」
「若手社員への伝え方や関わり方に、指導者が迷っている」
こうした課題に対しても、職場の状況に合わせて育成の方法を考えることが重要です。
日本ODコンサルタンツでは、OJT担当者研修や若手社員フォローアップ研修を通じて、知識やスキルの習得だけでなく、現場で実践し続けられる育成の仕組みづくりを支援しています。
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