コラム2026/08/28
【コラム】優秀なプレイヤーほど、管理職で苦労するのはなぜ?~「自分がやったほうが早い」から、「自分がやらなくてもチームが動く」へ~
先日、管理職向けの研修で、参加者の皆さまと「部下育成」について話す機会がありました。
その中で印象に残ったのが、こんな言葉です。
「部下に任せたい気持ちはあるけれど、結局、自分でやったほうが早いんですよね。」
管理職研修では、こうした声を耳にすることが少なくありません。
特に、プレイヤーとして長く成果を出してきた方ほど、この感覚を持っているように感じます。
考えてみれば、当然なのかもしれません。
自分で考え、自分で動き、結果を出してきたからこそ、管理職に抜擢されています。
仕事の進め方や判断の基準も、自分の中にある程度できあがっています。
だからこそ、部下の仕事を見ていると、
「そこはこうしたほうが早い」
「自分ならこうする」
と思う場面が出てきます。
そして、つい手を出してしまう。
ここに、プレイヤーから管理職へ役割が変わる難しさがあります。
「自分ができる」が、管理職では難しさになることもある
プレイヤー時代は、
「自分ができること」
が大きな強みになります。
一方で、管理職になると、その強みがそのまま武器になるとは限りません。
自分ができるからこそ、
部下に細かく指示しすぎる
つい自分で仕事を引き取ってしまう
部下が考える前に答えを教えてしまう
自分と同じやり方を求めてしまう
といったことが起こりやすくなります。
もちろん、管理職が手を出すこと自体が悪いわけではありません。
急ぎの案件やトラブル対応であれば、管理職が判断し、前に進める必要があります。
大切なのは、
「今は自分が判断する場面なのか。それとも、部下に考えてもらう場面なのか」
を意識して使い分けることです。
「答えを教える」と「答えを出せるようにする」は違う
例えば、部下から、
「この案件、どう進めればいいですか?」
と相談されたとき。
「こうすればいいよ」
と答えるのは簡単です。
しかも、その方が早く仕事が進むことも多いでしょう。
しかし、そこで一度、
「あなたはどう考えている?」
と問い返してみる。
すると、部下自身が考える時間が生まれます。
ここで重要なのは、何でも質問で返せばよいということではありません。
経験の浅い部下に対しては、まず具体的に教える必要がある場面もあります。
一方で、ある程度経験を積んだ部下に対して、いつまでも答えを与え続けていれば、自分で考え、判断する機会を奪ってしまいます。
部下育成という視点では、
「答えを教えること」と「自分で答えを出せるようにすること」
は、似ているようで少し違います。
管理職の仕事は「自分が成果を出すこと」から変わる
プレイヤー時代は、自分自身が高い成果を出すことが求められます。
しかし、管理職になると、役割は少しずつ変わっていきます。
自分一人で成果を出すのではなく、
部下やチームが成果を出せる状態をつくること
が求められるようになります。
そのためには、
どこまで任せるか
どこで支援するか
いつフィードバックするか
どんな問いかけをするか
どこまで自分で判断するか
といった関わり方を考える必要があります。
「任せる」
「フィードバックする」
「問いかける」
「主体性を引き出す」
どれも言葉にすると簡単です。
しかし実際の職場では、部下の経験や能力、仕事の緊急度、状況によって、適切な関わり方は変わります。
そこに、管理職という仕事の難しさがあります。
プレイヤー時代の強みを「チームのため」に使う
プレイヤーとして成果を出してきた経験は、管理職になってからも大きな強みです。
仕事の進め方を知っている。
判断基準を持っている。
難しい案件にも対応できる。
こうした力は、決して捨てる必要はありません。
変える必要があるのは、その強みの使い方です。
「自分が成果を出すため」に使っていた経験やスキルを、
「部下やチームが成果を出せるようにするため」に使う。
例えば、自分が答えを出すのではなく、部下が考えるためのヒントとして経験を伝える。
失敗しそうなときにすぐ仕事を取り上げるのではなく、必要な範囲で支援する。
成果だけを見るのではなく、成長の過程にも目を向ける。
管理職への役割転換とは、こうした「強みの使い方を変えること」でもあります。
管理職研修では「わかっているけれど、できない」を扱う
日本ODコンサルタンツの管理職研修では、知識を一方的にインプットするだけではなく、
「実際の職場で、こんなときどう関わるか」
を考える時間を大切にしています。
例えば、
部下からすぐに答えを求められたとき
任せた仕事が思うように進んでいないとき
部下のやり方が自分と違うとき
指導しても同じミスが繰り返されるとき
忙しくて育成に時間を割けないとき
など、管理職が日々直面する場面を題材に、自分自身の関わり方を振り返ります。
管理職に必要なのは、すべての答えを持つことではありません。
部下が自分で考え、判断し、少しずつ仕事を任せられるようになる。
そのための関わり方を身につけることも、管理職の大切な役割です。
おわりに
「自分がやったほうが早い」
そう感じること自体は、決して悪いことではありません。
むしろ、プレイヤーとして多くの経験を積み、成果を出してきたからこそ生まれる感覚です。
ただ、管理職になると、その経験や能力を使う相手が変わります。
「自分がやったほうが早い」から、
「自分がやらなくても、チームが動く」へ。
その転換には、仕事のやり方だけでなく、人を育てるための考え方や関わり方を学び直す時間も必要です。
プレイヤーとしての強みを、部下やチームの成長につなげる。
それが、管理職として次の成果を生み出す一つの鍵になるのではないでしょうか。
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