事例・トピックス~育成の森~

コラム2026/05/27

【コラム】“事実”を聞いたつもりが、“解釈”が返ってくる ― 人材育成・マネジメントで見落とされやすい「正しく見る力」 ―

組織の中で問題解決を進めようとするとき、
私たちは無意識のうちに“解釈”を“事実”として扱ってしまうことがあります。

例えば、研修や現場ヒアリングの中で、

「今、現場で何が起きていますか?」

と問いかけると、

・若手に主体性がない
・部下に当事者意識がない
・最近の新人は受け身だ

といった声が挙がることがあります。

もちろん、現場で実際に感じられているリアルな課題です。

しかし、よく整理してみると、それらは“事実”そのものではなく、
**「そう見えている解釈」**であるケースも少なくありません。

実際の現象としては、

・指示待ちの場面が多い
・会議で発言が少ない
・期限直前まで相談がない

といった状態なのかもしれません。

さらに背景を確認すると、

・どこまで自分で判断してよいのか分からない
・失敗して迷惑をかけたくない
・相談するタイミングが分からない

といった不安や認識のズレが存在しているケースもあります。

このように、「事実」と「解釈」が混在したまま議論が進むことは、人材育成やマネジメントの場面で意外と多く見られます。


問題解決は「解決策」から始まらない

問題解決というと、

・ロジカルシンキング
・分析手法
・フレームワーク

などをイメージされることがあります。

もちろん、それらも重要な要素です。

しかし実際の現場では、その前段階である、

「何が起きているのかを正しく捉えること」

でつまずいているケースも少なくありません。

いわゆる“空・雨・傘”で整理すると、

・空が曇っている(事実)
・雨が降りそうだ(解釈)
・傘を持つ(行動)

という流れになります。

一方、現場では、

「最近の若手は受け身だ」

という“解釈”から議論が始まってしまうことがあります。

すると、

・打ち手がズレる
・本人との認識差が広がる
・感情論になりやすい

といったことが起こりやすくなります。

特に、人材育成や組織マネジメントは“人”を扱う領域だからこそ、経験や価値観による解釈が入り込みやすいのだと感じます。


「考える力」よりも、「正しく見る力」

興味深いのは、この整理が必ずしも“頭の良さ”と比例しないという点です。

むしろ、

「それは事実なのか、解釈なのか」

を日頃から意識していないと、経験豊富な管理職であっても、無意識に“解釈”を“事実”として扱ってしまうことがあります。

一方で、この力はトレーニングによって高めることも可能です。

実際の研修では、

・事実と解釈を分ける対話
・観察ベースでフィードバックする演習
・問題の定義をそろえるケース討議

などを行うことで、会話や議論の質が大きく変化する場面があります。

問題解決力というより、
**“問題を正しく見る力”**を養うテーマに近いのかもしれません。


組織の「対話の質」を左右するテーマ

このテーマは、単なる思考スキルにとどまりません。

実際には、

・1on1
・OJT
・新人育成
・管理職育成
・部門間連携

など、組織内の“対話の質”そのものに関わっています。

事実を共有できる組織は、感情論に流れにくく、建設的な議論がしやすい。

一方で、解釈だけが飛び交う組織は、認識のズレや不信感が積み重なりやすくなります。

特に最近は、

・若手との認識差が大きい
・管理職によって指導基準が異なる
・会話が感覚論になりやすい

といった課題感から、このテーマを扱う企業も増えてきています。


「知識」ではなく、「整理する体験」が重要

このテーマは、知識として理解するだけでは定着しにくい領域でもあります。

そのため研修では、

・実際の会話
・ケーススタディ
・フィードバック演習

などを通じて、“整理する体験”を繰り返すことが重要になります。

例えば、

・新人研修では「報連相」
・管理職研修では「1on1」や「問題整理」

といったテーマに組み込むことで、現場との接続もしやすくなります。

実際の研修現場でも、

「同じ出来事なのに、管理職ごとに捉え方が違う」
「“できていない”の定義が曖昧だった」
「感覚でフィードバックしていたことに気づいた」

といった声が挙がることがあります。


おわりに

人材育成やマネジメントにおいて、
「問題をどう解決するか」はもちろん重要です。

しかしその前に、

「何が起きているのかを、どれだけ正しく見られているか」

によって、その後の対話や打ち手は大きく変わります。

派手なテーマではありませんが、

・新人育成
・管理職育成
・1on1
・組織内コミュニケーション

など、多くの場面の土台になる力でもあります。

もし現場で、

・話が感覚論になりやすい
・管理職によって認識がばらつく
・若手との認識差が埋まらない

といった状況がある場合は、
一度「事実」と「解釈」の整理から見直してみる価値があるかもしれません。

本コラムが、組織内の対話や育成を見直す一助となれば幸いです。

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