事例・トピックス~育成の森~

コラム2026/07/08

【コラム】「怒っていない」は伝わっていないかもしれない フキハラ(不機嫌ハラスメント)が生まれる瞬間とは

「怒っていない」のに、話しかけづらい職場になっていませんか

近年、ハラスメント研修の打ち合わせや管理職研修の中で、人事担当者の方からこんなお話を伺う機会が増えています。

「以前に比べて厳しく叱る上司は減りました。でも、『話しかけづらい』『機嫌が悪そうで相談しにくい』という声は、むしろ増えているように感じます。」

この言葉は、多くの企業に共通する課題を表しているように思います。

例えば、

・ため息が多い

・返事がそっけない

・パソコンを見たまま挨拶をする

・無言で仕事をしていることが多い

こうした行動は、本人に悪気があるとは限りません。

「忙しかっただけ」
「考え事をしていただけ」

というケースも多いでしょう。

しかし、受け取る側は、

「何か怒らせてしまったのだろうか」
「今は相談しない方がいいかもしれない」

と感じることがあります。

こうした”受け手の解釈”が積み重なることで、職場には少しずつ話しかけづらい空気が生まれていきます。

近年、「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」と呼ばれることが増えている現象も、こうした日常のコミュニケーションから生まれているケースが少なくありません。


問題は「感情」ではなく「伝わり方」

以前、私が前職で部下をマネジメントしていた頃、ある社員から相談を受けたことがありました。

「考え事をすると、ついため息が出てしまうんです。やっぱり直した方がいいですよね。」

私は、

「もちろん、ため息はできるだけ控えた方がいいと思います。本人にそのつもりがなくても、周囲は『怒っているのかな』『機嫌が悪そうだな』と受け取ってしまうことがありますから。」

と伝えました。

その一方で、

「人間ですから、忙しい日や考え込んでしまう日はあります。どうしてもため息が出てしまうこともありますよね。そんなときは、『少し考え事をしていた』『怒っているわけではないよ』と一言添えてみてください。」

とも伝えました。

大切なのは、感情を完全になくすことではありません。

自分の状態を相手がどう受け取るかを意識し、安心できる一言を添えること。

その小さな行動だけでも、職場の空気は大きく変わります。

実際、その社員からは後日、

「以前より周囲から話しかけられることが増えました。」

という報告を受けました。

職場の雰囲気を変えたのは、ため息をなくしたことではなく、「安心を伝えるコミュニケーション」を意識したことだったのです。


言葉だけでは、安心感は伝わらない

コミュニケーションでは、言葉だけでなく、

・表情

・視線

・声のトーン

といった非言語の要素も、相手の受け止め方に大きく影響します。

よく知られているメラビアンの法則も、本来は言葉と態度が矛盾した場面での印象形成に関する研究ですが、

「言葉だけでは安心感は伝わらない」

ということを考えるヒントになります。

例えば、

「おはようございます。」

と声を掛けながらも、目線はパソコンの画面を見たまま。

本人は挨拶をしているつもりでも、相手は、

「忙しそうだから後で話しかけよう。」

と感じるかもしれません。

こうした行動は、自分では気づきにくいものです。

だからこそ、自分のコミュニケーションの癖を客観的に振り返ることも重要になります。


「何をしてはいけないか」だけでは職場は変わらない

最近では、ハラスメント研修だけでなく、管理職研修やコミュニケーション研修の中でも、こうした日常のコミュニケーションをテーマとして扱う企業が増えています。

例えば、

・パソコンを見たまま挨拶をする場合と、相手の目を見て挨拶をする場合の印象を比較する

・「ため息」「無言」「短い返事」といった場面を題材に、「相手はどう感じるか」「安心してもらうためには何ができるか」を考える

・管理職同士で普段のコミュニケーションの癖をフィードバックし合う

こうした演習を通じて、自分では気づきにくい行動を客観的に知る機会を設けています。

ハラスメント対策というと、

「何をしてはいけないか」

に目が向きがちですが、本当に職場の空気を変えるためには、

「どうすれば相手が安心して相談できるか」

という視点も欠かせません。


おわりに

フキハラは、必ずしも強い叱責や感情的な言動によって起きるものではありません。

本人に悪気のない表情や態度が、周囲に「話しかけづらさ」として伝わってしまうこともあります。

だからこそ、

・一言添える

・相手の方を見る

・表情をやわらげる

・相手が安心できる反応を返す

といった日々の小さな行動が、相談しやすい職場づくりにつながります。

心理的安全性とは、「何でも許すこと」ではありません。

安心して相談でき、必要なことを率直に伝え合える関係性を築くこと。

そのためには、「何を伝えるか」だけでなく、「どのように伝わっているか」を振り返ることも重要です。

日常の何気ない表情や態度を見直すことが、これからのハラスメント防止や、より良い職場づくりの第一歩になるのではないでしょうか。

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