テーマ別・課題別研修2026/07/01
【コラム】「ぬるい職場」が生まれる、本当の理由 管理職が「伝えたいけれど、言えない」と感じている
管理職研修の中で、参加者の方から次のような声を伺うことがあります。
「本当は伝えたいことがある。でも、厳しく受け止められたり、
ハラスメントと受け取られたりするのが怖くて、つい言葉を飲み込んでしまう」
このようなお話は、近年さまざまな企業で耳にするようになりました。
以前は、「もっと厳しく指導しなければならない」「部下にきちんと言わなければならない」という悩みが多かったように思います。
しかし最近では、管理職の悩みが、
「伝えたいけれど、言えない」
という方向に変わってきているように感じます。
安心して働ける環境づくりが重視されるようになったことは、とても良い変化です。
一方で、その考え方が、
・相手が嫌な思いをすることは言わない方がよい
・指摘をしないことが優しさ
・厳しいことを伝えるとハラスメントになるかもしれない
と受け止められてしまう場面もあります。
その結果、本来伝えるべきことが伝えられず、小さな課題がそのまま放置されてしまう。
こうした状態が積み重なることで、いわゆる「ぬるい職場」が生まれてしまうことがあります。
心理的安全性は「何でも認めること」ではない
私たちは、ハラスメント防止や心理的安全性をテーマとした研修に携わることがあります。
その中で大切にしているのは、心理的安全性の意味を正しく捉えることです。
心理的安全性とは、決して「何でも認めること」ではありません。
本来は、
必要なことを、安心して率直に伝え合える状態
を指します。
つまり、相手に配慮することと、必要なことを伝えないことは同じではありません。
組織には目標があり、一人ひとりに期待される役割があります。
その実現のためには、改善してほしいこと、期待していること、考えてほしいことを、適切に伝え合う必要があります。
「言わないこと」が一見優しさのように見える場合もあります。
しかし、必要なフィードバックが届かなければ、本人は改善の機会を失ってしまいます。
また、周囲も同じ課題を抱え続けることになり、結果として職場全体の成長が止まってしまうこともあります。
「言わない」と「強く言う」の間にあるもの
では、どのように伝えればよいのでしょうか。
ここで重要になるのが、アサーティブコミュニケーションという考え方です。
アサーティブとは、自分の考えを一方的に押し付けることでも、相手に遠慮して何も言わないことでもありません。
相手を尊重しながら、自分の考えや期待を率直に伝えるコミュニケーションです。
例えば、改善してほしい点がある場合でも、ただ注意するのではなく、
・なぜそれを伝える必要があるのか
・どのような状態を期待しているのか
・相手はどのように受け止めているのか
・今後どのように改善していけそうか
を対話しながら確認していくことが大切です。
このような関わり方は、単に指摘をするためのものではありません。
相手の成長を支援し、職場の信頼関係を育てるためのコミュニケーションでもあります。
「伝えること」と「伝え方」は違う
一方で、率直に伝えることと、強い言葉で伝えることは違います。
「必要なことだから言うべきだ」という考え方だけでは、相手に伝わらない場合があります。
特に、言葉が強くなりやすい方や、感情が先に出やすい方は、これまで以上に伝え方への配慮が求められます。
人格を否定するような表現や、感情的な叱責は、相手の成長を促すどころか、対話そのものを止めてしまいます。
大切なのは、
「言わない」のでも、「強く言う」のでもなく、「伝わるように伝える」こと
です。
そのためには、伝える側が一方的に努力するだけではなく、受け止める側にも学びが必要です。
指摘やフィードバックをすべて否定として受け止めるのではなく、自分の成長につながる情報として捉える力も求められます。
「伝え方」と「受け止め方」の双方を育てることが、組織全体の対話の質を高めていくのです。
働きやすさと成長は両立できる
近年、管理職研修や1on1研修、コミュニケーション研修などで、「どう伝えるか」に関するご相談が増えています。
背景には、育成とハラスメント防止をどう両立するかという、多くの企業に共通する課題があります。
働きやすさと成長は、どちらか一方を選ぶものではありません。
安心して挑戦できること。
必要なフィードバックを率直に伝え合えること。
相手を尊重しながら、期待や課題を共有できること。
その両方がそろってこそ、人も組織も成長していきます。
管理職だけが伝え方を学べばよいわけではありません。
新人や若手社員も含め、組織全体で「伝え方」と「受け止め方」を学ぶことで、職場の対話は少しずつ変わっていきます。
おわりに
「ぬるい職場」は、単に厳しさが足りないから生まれるものではありません。
むしろ、本来伝えるべきことが伝えられない状態が続くことで、結果的に生まれてしまうものではないでしょうか。
ハラスメントを防ぐこと。
心理的安全性を高めること。
必要なフィードバックを伝えること。
相手の成長を支援すること。
これらは本来、対立するものではありません。
大切なのは、「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝え合うか」です。
「言えない職場」ではなく、「伝え合える職場」をどうつくるか。
これからの人材育成では、その視点がますます重要になっていくのではないでしょうか。
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