テーマ別・課題別研修2026/10/16
【コラム】心理的安全性は高いはずなのに、なぜ課題が残る?―調査結果から考える職場づくりのポイント
心理的安全性は、組織づくりや人材育成を考えるうえで重要なキーワードの一つです。
近年、心理的安全性を高めるために、職場のコミュニケーションの改善や管理職の意識改革などに取り組む企業も増えています。
一方で、心理的安全性が高いと認識されている職場であっても、必ずしも課題がなくなっているわけではありません。
2026年8月に株式会社LDcubeが公表した調査では、人事・人材育成担当者の61%が「自社の心理的安全性は高い」と回答しました。
ところが、心理的安全性が高いと回答した人のうち、51%は何らかの課題も感じていたことが分かりました。
心理的安全性が高いと感じていても、なぜ課題が残るのでしょうか。
今回は、この調査結果をもとに、心理的安全性の捉え方と、職場で実践したいコミュニケーションについて考えます。
心理的安全性とは?「仲が良い職場」との違い
心理的安全性とは、職場やチームの中で、自分の意見や疑問、懸念などを伝えても、対人関係上の不利益を過度に恐れずに済む状態を指します。
心理的安全性が高い職場というと、次のような状態をイメージする方もいるかもしれません。
・職場の雰囲気が良い
・メンバー同士の仲が良い
・上司が優しく、話しかけやすい
もちろん、良好な人間関係は大切です。
しかし、「人間関係が良いこと」と「心理的安全性が高いこと」は、必ずしも同じではありません。
例えば、普段は和やかな雰囲気の職場であっても、次のような状況が見られることがあります。
・会議で上司と異なる意見を言いづらい
・分からないことがあっても、今さら質問しにくい
・ミスを報告すると、厳しく責められるのではないかと不安になる
・周囲との関係を悪くしたくないため、問題点を指摘できない
こうした状況では、表面的な人間関係が良好であっても、率直な意見交換が十分に行われているとは言えません。
心理的安全性を考える際には、単に職場の居心地が良いかどうかではなく、必要なときに疑問や意見を安心して伝えられるかという視点が重要になります。
調査から見えた、心理的安全性の高い職場づくりの課題
株式会社LDcubeが2026年8月に公表した調査では、人事・人材育成担当者232件の回答から、心理的安全性に関する企業の認識や課題が明らかになりました。
調査では、61%が自社の心理的安全性を高いと認識している一方、そのうち51%が何らかの課題も感じていました。
また、心理的安全性を高めるうえでの障壁として、次のような回答が挙がっています。
・変わりづらい組織風土:35%
・経営層・管理職の理解不足:30%
・職場が仲良し集団になることへの懸念:29%
特に注目したいのは、「変わりづらい組織風土」が最も多く挙げられている点です。
心理的安全性の重要性を理解していても、長年続いてきた職場の習慣やコミュニケーションのあり方を変えることは、簡単ではありません。
例えば、会議で意見を求められても、最終的には上司の考えに合わせることが当たり前になっている職場。
新しい提案をしても、まず「それは難しい」と否定される職場。
こうした経験が繰り返されれば、メンバーは次第に発言を控えるようになるかもしれません。
心理的安全性を高めるためには、制度や方針を整えるだけでなく、日々の職場で実際にどのようなコミュニケーションが行われているかを見直すことが欠かせません。
心理的安全性を高めるために、職場で実践したい3つのこと
では、心理的安全性の高い職場づくりに向けて、具体的にどのようなことができるのでしょうか。
ここでは、日々のコミュニケーションの中で意識したい3つのポイントをご紹介します。
1.意見を聞いたら、まず受け止める
会議や日常の会話で、自分と異なる意見が出たとき、どのように反応しているでしょうか。
すぐに否定したり、自分の考えを伝えたりする前に、まず相手の意見の背景を確認することが大切です。
例えば、
「そう考えた理由を教えてもらえる?」
「どのような点が気になっている?」
といった問いかけによって、相手の考えを理解しようとする姿勢を示すことができます。
意見に賛成することと、相手の発言を尊重することは別です。
たとえ最終的に意見を採用しない場合でも、まずは受け止め、十分に話を聞くことが、次の発言のしやすさにつながります。
2.「分からない」「困っている」を言いやすくする
仕事を進めるうえでは、誰にでも分からないことや困ることがあります。
しかし、職場によっては、
「こんなことを聞いたら、能力が低いと思われるのではないか」
「忙しそうなので、相談するのは申し訳ない」
といった気持ちから、質問や相談をためらってしまうことがあります。
こうした状況を防ぐためには、上司や先輩の関わり方も重要です。
例えば、上司自身が分からないことを認めたり、過去の失敗経験を共有したりすることも、一つの方法です。
また、普段から「困っていることはない?」「進めるうえで気になることはある?」と声をかけるなど、相談しやすい関係を築いておくことも大切です。
問題が大きくなってから相談するのではなく、早い段階で疑問や不安を共有できることが、仕事の質やチームの連携にもつながります。
3.率直な意見交換と、相手への配慮を両立する
心理的安全性を高めることは、意見の違いや必要な指摘を避けることではありません。
仕事を進めるうえでは、ときには相手と異なる考えを伝えたり、改善が必要な点を指摘したりすることも必要です。
大切なのは、相手を否定するのではなく、仕事や行動について建設的に話し合うことです。
例えば、
「そのやり方は間違っている」
と一方的に伝えるのではなく、
「この進め方だと、納期に影響が出る可能性があると思う。ほかの方法も考えてみない?」
と伝えることで、課題を共有しながら改善策を考える対話につなげられます。
相手を尊重することと、必要なことを率直に伝えること。
この両方を大切にする姿勢が、心理的安全性の高い職場づくりには欠かせません。
心理的安全性を「職場の雰囲気」だけで判断しない
心理的安全性は、単に職場を居心地の良い場所にするためのものではありません。
メンバーが安心して質問や相談をし、必要な意見を交わしながら、より良い仕事につなげていくための土台です。
今回の調査では、心理的安全性が高いと認識している回答者の中にも、課題を感じている人が少なくないことが示されました。
心理的安全性を高めるためには、「自社の職場は雰囲気が良い」「人間関係は悪くない」という認識だけで満足せず、日々のコミュニケーションを具体的に振り返ることが大切です。
例えば、次のような問いから始めてみてはいかがでしょうか。
・会議では、立場に関係なく意見が出ているか
・分からないことや困っていることを、早い段階で相談できているか
・異なる意見や改善提案が出たとき、まず耳を傾けているか
「職場の雰囲気は良いか」だけでなく、「言いにくいことも安心して伝えられるか」。
こうした視点を持ち、日々の関わり方を見直していくことが、心理的安全性の高い職場づくりへの第一歩となります。
【調査出典】
出典:株式会社LDcube
「心理的安全性の高い職場づくり」に関する実態調査
- 調査期間:2026年5月29日~6月11日
- 調査対象:人事・人材育成責任者・担当者
- 有効回答数:232件
調査詳細:
https://ldcube.jp/blog/psychological_safety642
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