事例・トピックス~育成の森~

管理職研修・組織開発2026/10/20

【事例紹介】部下へのアドバイス、その前に必要なこと ― 信頼関係と適切な指導を考える新任管理職研修 ―

研修実施の背景

新たに管理職となった方にとって、部下とのコミュニケーションや指導・育成は、大きな課題の一つです。

これまでは自分自身が成果を上げることに注力していた方も、管理職になると、部下一人ひとりの状況を把握し、チームとして成果を生み出すことが求められます。

一方、実際の職場では、

部下との距離感やコミュニケーションの取り方が分からない

自分の経験をもとに指導しても、うまく伝わらない

ハラスメントを意識するあまり、必要な指導をためらってしまう

部下の考え方や価値観の違いに、どのように対応すればよいか悩む

といった課題が生じることもあります。

今回ご紹介する企業様からは、新任管理職が陥りがちなコミュニケーションの悩みに対応するとともに、昨今のハラスメントリスクについて正しい知識を身につけ、適切な指導・育成のポイントを押さえてほしいというご要望をいただきました。

そこで、マネジメントの基本的な考え方から、自己理解、ハラスメント防止、部下との信頼関係づくり、傾聴や適切な伝え方までを組み合わせた新任管理職研修を実施しました。


研修のねらい

本研修では、以下の3点を主なねらいとしました。

1.自身のリーダーシップ、コミュニケーションの傾向について知り、自己理解を深める

自分自身の特徴や関わり方の傾向を知り、マネジメントにおける強みや改善点を考える。

2.今どきの若手社員の傾向・特徴を知る

部下との世代や価値観の違いを理解し、一人ひとりに応じた関わり方を考える。

3.部下指導・育成の核となるコミュニケーションスキルを磨く

日頃の信頼関係を築くための話の聴き方・引き出し方や、ハラスメントにならない適切な指導の仕方、効果的な褒め方・叱り方・伝え方を学ぶ。

知識を習得するだけでなく、実際の職場でのコミュニケーションを振り返り、今後の行動につなげることを重視しました。


プログラム概要

【オリエンテーション】

研修のねらいと進め方

部下とのコミュニケーションの現状共有

まずは、日頃の部下との関わり方や、コミュニケーションにおいて難しいと感じていることを共有し、研修で考えたい課題を整理します。

 

【1.マネジメントことはじめ】

マネジメントの原理原則

マネジメントとリーダーシップ

管理職に求められる基本的な役割を確認します。自身が成果を上げる立場から、部下を通じて組織として成果を生み出す立場へと変わることを踏まえ、マネジメントとリーダーシップの考え方を学びます。

 

【2.マネージャーとしての基本的知識】

ハラスメントへの基本的理解

指導の際の留意点(ハラスメントにならない指導)

メンタルヘルスマネジメント

ハラスメントに関する基本知識を確認し、適切な業務指導との違いや、指導時に留意すべきポイントについて考えます。

また、部下の心身の状態への配慮など、管理職として押さえておきたいメンタルヘルスマネジメントについても学びます。

 

【3.部下との信頼関係を築くリーダーシップ】

職場の心理的安全性

コミュニケーションのための自己理解

相手のタイプ別アプローチ

タイプ別リーダーシップのとり方

相手を傷つけない伝え方、叱り方

自分自身のコミュニケーションの傾向を振り返り、相手のタイプや特徴に応じた関わり方を考えます。

また、心理的安全性を意識した職場づくりや、相手を尊重しながら必要なことを伝える指導方法について学びます。

 

【4.部下との信頼関係を築き、成長を促す】

傾聴の基本スキル

ロールプレイ

部下の話を聴き、考えや気持ちを引き出すためのコミュニケーションスキルを学びます。

ロールプレイを通じて、相手の話を受け止める姿勢や問いかけ方などを実践し、日頃の部下指導に活かすためのポイントを整理します。

 

【まとめ】

研修での学びや気づきを振り返り、今後の職場で意識したい行動を考えます。


管理職は、ついアドバイスをしがち

今回の研修で、講師が伝えたことの一つが、「アドバイスの前に、まず共感すること」の重要性です。

管理職は、部下から相談を受けると、これまでの経験や知識をもとに、すぐに解決策を伝えようとすることがあります。

例えば、部下から、

「仕事が多くて、もう手が回りません」

と相談されたとき、

「まず優先順位をつけて、仕事を整理してみよう」

とアドバイスする。

もちろん、解決策を伝えること自体が悪いわけではありません。

しかし、部下はまず、自分の困っている状況や気持ちを理解してほしいと思っているかもしれません。

そんなときは、すぐにアドバイスをするのではなく、

「仕事が重なって、余裕がなくなっているんだね。今、何が一番大変?」

と、相手の気持ちを受け止め、状況を確認する。

そのうえで、

「それなら、一度仕事を整理して、優先順位を一緒に考えてみようか」

とアドバイスする。

伝えている解決策は似ていても、伝える順番によって、相手の受け止め方が変わることがあります。

部下との信頼関係を築くためには、正しいことを伝えるだけでなく、その前に相手を理解しようとする姿勢を示すことが大切です。


「同感」と「共感」は違う

ここで重要になるのが、「同感」と「共感」の違いです。

例えば、部下から、

「今の仕事の進め方には納得できません」

と言われたとします。

このとき、

「確かに、その進め方はおかしいよね」

と、相手の意見や考えに賛成するのは「同感」です。

一方、

「そう感じているんだね。どのあたりに納得できないのか、もう少し聞かせてもらえる?」

と、相手の気持ちや考えを理解しようとするのが「共感」です。

管理職は、部下の意見すべてに賛成できるわけではありません。

ときには、部下とは異なる判断をしたり、改善を求めたりする必要もあります。

しかし、同感できなくても、共感することはできます。

相手の言い分をすべて認める必要はありません。

まずは相手がなぜそう感じているのかを理解しようとする。

そのうえで、管理職として必要な判断やアドバイスを伝える。

こうした関わり方が、部下との信頼関係を築くうえで重要になります。


ハラスメントへの配慮と、適切な指導を両立する

近年、管理職にはハラスメント防止に対する正しい知識と意識が、これまで以上に求められています。

一方で、ハラスメントを意識するあまり、

「どこまで指導してよいのか分からない」

「厳しく伝えるとハラスメントになるのではないか」

と悩む方もいらっしゃいます。

しかし、ハラスメントを防ぐことと、必要な指導を控えることは同じではありません。

業務上必要な指導は、管理職の重要な役割です。

大切なのは、指導の目的や必要性を明確にし、相手の人格を否定するのではなく、具体的な行動や事実に基づいて伝えることです。

また、相手の状況や受け止め方にも目を向けながら、適切な言葉や方法を選ぶことが求められます。

今回の研修では、ハラスメントに関する基本知識だけでなく、裁判例や具体的な事例を通じて、管理職としての対応や指導のポイントを考えていただきました。

ハラスメントを恐れて何も言わないのではなく、相手を尊重しながら必要なことを伝えられる管理職になること。

それも、今回の研修で大切にした視点の一つです。


参加者の声

研修後には、次のような感想をいただきました。

・自分や部下のタイプ別のコミュニケーション方法など、業務に活かせる内容を学べました。

・部下を持たない身ではあるが研修の内容は有意義だと思ったしいずれ活用する機会もあると思うので、逐次内容を復習して定着を図っていきたいと思えた。

・裁判例や講師の方の実体験など、注意点や対応の仕方がよくイメージできるため大変参考になりました。

・基本的な事例に加えて、悩ませる特殊な事例の紹介やグループで考える機会が多くて良かったです。


おわりに ― 新任管理職に必要なのは、知識と実践の両方

管理職には、マネジメントの知識だけでなく、部下一人ひとりと向き合い、適切に指導・育成する力が求められます。

特に新任管理職は、これまでの仕事の進め方やコミュニケーションの習慣を見直すことが必要になる場面も少なくありません。

今回の研修では、マネジメントやハラスメントに関する知識に加え、自己理解、タイプ別のコミュニケーション、傾聴、適切な伝え方などを学び、実践につなげることを目指しました。

そして、部下とのコミュニケーションにおいて大切なのは、「正しいアドバイスをすること」だけではなく、「相手を理解しようとすること」です。

同感できなくても、共感することはできる。

まず相手の話を聴き、気持ちを受け止め、そのうえで必要な指導やアドバイスをする。

そうした日々の関わりの積み重ねが、部下との信頼関係を育み、成長を支える土台になります。

日本ODコンサルタンツでは、新任管理職研修についても、企業様の課題や管理職に求める役割に合わせて内容を設計しています。

マネジメントの基本から、ハラスメント防止、部下指導・育成、コミュニケーションスキルまで、現場での実践につながる研修を大切にしています。

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